畑と芸術 新藤兼人監督 裸の島

 ゆうべは久しぶりの友人と電話で話をしました。
 その人はかなり変わり者で(わたしから見るとですが)、近畿地方で半分自給自足のような生活をされています。
 
 地球環境に対する危機意識のような部分でそういうことを実践されていて、興味深い話を聞くことができました。
 そういう生活では、土地の人との人間関係も重要な要素になると思いますが、自分に合う土地を見つけることができているそうです。
 
 自給自足というのは、一つの答えではあるなあと思います。
 「畑をするようになって、『地球』ともっとまっすぐに向かい合うことができるようになった」という意味の言葉は考えさせられるものでありました。
 矛盾だらけの都会暮らしをしている人間には、少し耳が痛い言葉かな。。

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 少し時間が経ってしまったけれど、北家映画祭で、新藤兼人監督の「裸の島(1960年)」を観ています。
 
 
 この作品は新藤監督が自ら作った「近代映画協会」という映画制作会社の解散記念として、500万円という低予算で作られた映画で、主演は当時新藤監督の愛人だった乙羽信子さんと、殿山泰司さんです。
 全編セリフがまったくなく、それでもストーリーが伝わるように作られている「実験映画」と呼べるものです。
 瀬戸内海の小さな島に住む一つの家族が、ほぼ自給自足の生活をしているのが淡々と描かれています。
 実験として作られた作品ですが、1961年のモスクワ映画祭でグランプリなどを獲り、近代映画協会は解散を免れたということになったそうですし、新藤監督の名が世界に知られたきっかけの作品であるようです。

 春に観た新藤兼人監督の「一枚のハガキ」も、最終的に人が土を耕し生きていくことの中に人類の普遍的な希望を描いていたと思うのですが、その原型がすでに「裸の島」の中に描かれていたのだなと思いました。

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 映画として観ると、わたしは「裸の島」より「一枚のハガキ」のほうがよかったように思います。「裸の島」は設定にちょっと無理がありすぎるような気がしました。実験映画として観ればよいのですが、ストーリーものとして観ると、あまりにも不合理な気がします。
 主人公の夫は、なにか深い宗教的な理由があるなどであの生活を続けることに固執するのだ、と考えないと無理がある。時代設定を考えると。
 であれば、そこについても少しは説明があってほしいところだけれど、それが一切ないので、だから実験映画という枠で観るしかないかなと思うのです。
 「一枚のハガキ」では、全編がその説明だったような気がします。「人が土に向かう」ということの偉大さ。
 100歳まで映画監督として生きた新藤兼人さんには、そのような思想があったのだろうなと思いました。
  
 「裸の島」は個人的には今年観た中でナンバーワンだと思っているタル・ベーラ監督の「ニーチェの馬」も彷彿とさせる作品でした。元ネタの一つと見ていいのではないか。でも、寓話的、黙示録的である「ニーチェの馬」のほうがわたしはずっとずっと好きです。
  
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 「ニーチェの馬」を思うと「自給自足そのものが人間の理想なんだ」ということをそのまま直接的に芸術作品で描くということは、ちょっと違うんじゃないのかな、という気がしなくもないのです。作品としては、どこかで反転していないといけないというか。。
 それこそ矛盾になりますよね。。映画を作るには、たくさんの人工物が必要ですから。。 
 というか、映画で「畑をやるのが一番大事だ」と言われるより、実際に畑をする人から野菜とともに「これがなかったらあんたたちはどうするのだ」と言われることのほうが堪えるというか。。
 こんなことを言ったらうるさすぎるのでしょうか。
 
 個人の「主義主張」とその人の「芸術表現」は、純粋にイコールであってはならないのかもしれない。
 芸術=現実 ではないから。
 だからこそ、芸術家であるというのは大変なことであるのかもしれません。
 
 ***

 でも、自分の生き方の実践として「畑をやる」というのは一つの答えかなと思います(以前、とても悩んだときに母方の亡くなった祖父が夢に出てきて「おじいちゃん、わたしはずっと道に迷っているの」と言ったら「あんだか。そんなこと言ってんなら畑でもやれ」と言われたことがあります(笑)。あのときは本当に祖父から言葉をもらったという感覚がありました。言うこと聞いてないでごめんね、おじいちゃん!)。
 わたしの友人にも、その人なりの強い思想があるのだと思います。
 でもそれを、何も考えず当然のこととしてやっている人もいるようで、、昔からの農家の人など、、、そういう人たちにはとてもかなわないな、という思いはずっとあります。

 自分の道というのを、どうやって作っていくべきか、いろいろと考えさせられています。

 「裸の島」を全編見られるので、貼っておきます。名作の一つとは言えると思うので、見て損はないように思います。
 

 
 *おまけ*
 今日の夕空↓
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