青柳いづみこトークショー よみがえる19世紀ヴィルウオーゾ エスパスビブリオ

 昨日は冷たい雨の中(我が家では昨日、扇風機をしまっていないのに電気ストーブを出しました。。)、神田駿河台にリニューアルオープンしたアート系ブックカフェ「エスパスビブリオ」で開かれたトークショーに行ってきました。

 トークショーはピアニストで著述家でもある青柳いづみこさんがされるもので、最近上梓したご著書「アンリ・バルダ 神秘のピアニスト」で取り上げたピアニスト、アンリ・バルダさんと20世紀ピアニズムについて語るというものでした。
 
アンリ・バルダ 神秘のピアニストアンリ・バルダ 神秘のピアニスト
(2013/09/05)
青柳 いづみこ

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 アンリ・バルダさんは1941年生まれのユダヤ系フランス人で、エジプトのカイロ生まれだそうです。
 エジプトには当時はヨーロッパ人がけっこういたそうで、ユダヤ人街まであったそうです。
 イスラムの街特有の迷路のような路地ではなくて、道が碁盤の目のようになっていて「85番街」という名前がつくような街でバルダさんは生まれたそうです(奈良や京都もそうですね。台北も「碁盤の目」だった)。

 そのように「クラシック音楽の僻地」で育って、19世紀のピアニスト、リストの門下生からの直々の教育を受けたことで、20世紀から続くピアノ界の主流とは違う、19世紀的なロマンチシズムに満ちた表現を今に伝える貴重なピアニストとして、アンリ・バルダさんは注目に値する方なのだそうです。
 でも本国フランスではほとんど無名で無視されてきた存在なのだそうで、青柳いづみこさんの先生が見出して日本での公演をバックアップし、日本ではきちんとした「ピアニスト」としての扱いを受けられるようになってきたそうです(それも2000年代に入ってからなのだそうですが……)。
 その個性的な演奏に魅せられた青柳いづみこさんが惚れ込み、応援して取材されてきた方なのです。
 この9月にも来日されていて、東京都交響楽団の定期演奏会に出演されたそうです。

 わたしはもちろんこのバルダさんのことは知らなかったのですが、ビブリオさんから定期的にイベント案内のメールが来ていて、読んでみておもしろそうだと思ったので聴講の申し込みをしたのでした。

 とってもおもしろかったです!
 もしかしたら専門的過ぎてついていけないかな、と思ったのですがなんのなんの。
 青柳さんがなにを語っていらっしゃるのか、よっぽどマニアックで専門的な固有名詞以外はだいたい分かりました(もちろん青柳さんも専門家に向けてお話されているわけではないのですが)。
 それもけっこう嬉しかったのですが。
 
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 19世紀的なヴィルトゥオーゾというのがどういうものかと言いますと、簡単に言えば、楽譜通りに弾かないで即興で装飾音をつけたりテンポを変えたり、音の強弱も独自にするというなんだそうです。
 リスト以降、ピアニストたちはそれをしすぎて、もはや原曲がどんなか分からないような演奏もされるようになったそうです。さすがにそれはダメですよね。作曲家が嫌がることもあるそうです(ショパンはリストを嫌がっていた)。
 その反省から、20世紀には楽典主義、原典主義、直解教育が主流になり、なんにせよ、演奏家は楽譜通りに弾くのがよいとされてきたそうです。
 青柳さん自身もそのような教育を受けていて、そのことに息苦しさを感じていたそうなのですが、そこから音楽家の演奏形態の歴史を調べるようになり、それがエッセイを書くことにつながったのだそうです。
 つまり、ご自分の演奏をもっと納得いくようにするために書いているのだ、ということなのだそうです(ピアニストなのに文章なんか書いて、というようなことを言われることがあるそうです)。

 今回取り上げているバルダ氏はかなりテンポを変えたりするようで、とても新鮮に思えたそうです。
 (20世紀原典主義を代表するピアニストはポリーニだそうです。アルテュール・ルビンシュタインがショパンコンクールでポリーニを聴いたとき『ここにいる審査員の誰も、彼のように正確に弾けない』と言ったそうで、ポリーニの登場以降、世界のピアニストの目指されるべき規範が変わったそうです。青柳さんはそれにあまりよい印象をお持ちではないようでした)

 バルダ氏のCDやDVD映像を視聴しながらお話は進んでいきました。
 
 わたしの好きな感じの演奏だなと思いました。

 わたしも、メトロノームのように「正確無比」な演奏より、その人のそのときの息づかいが分かるような演奏が好きなのです。これは、いろいろな方の演奏を聴いていくうちに(まだまだ少ないですけど)自分の好みが分かってきました。
 そして、コンスタンチン・リフシッツさんの演奏を聴いて、確信するようになりました。
 でも、そういう演奏家がどこにいるのかよく分からないので、ここでまた一人分かってよかったです。

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 昨日聴かせていただいた演奏は、知らない曲ばかりだったので演奏の比較ができなかったのですが、帰宅してYouTubeを漁ったらわたしでも違いが分かる演奏を見つけることができました。

 ショパン マズルカ 作品63-3

 ラストあたりが!

 バルダさんはパリ・オペラ座でもピアニストとして練習から本番まで一緒にまわっていたことがあるそうです。
 「ウエスト・サイド・ストーリー」の振り付け師ジェローム・ロビンスのバレエ作品で使われていたそうで、ショパンのノクターンに載せて踊られるパ・ド・ドゥ「イン・ザ・ナイト」の映像が素晴らしかったです。
 バルダさんは踊り手に合わせてテンポを変化させるのが得意なので、しばらくオペラ座のロビンス作品で重用されていたそうです。
 昨日見たものとは違うのですが、男性の踊り手がマニュエル・ルグリさんだったのですが、YouTubeを漁ったら女性が違いますがルグリさんでピアノ演奏の音が似ているものがあったので、バルダさんだという確証はないのですが貼っておきます。
 

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 今年の夏は暑すぎてピアノを弾く気にならなかったし(汗をすごいかくんです)、右ひじの痛みもあるから練習しなくなっていますが、芸術の秋となってきたことだし、また少しずつピアノも弾きたいかなと思いました。

 バルダ氏は来年も来日されるそうなので、ぜひ聴いてみたいと思いました。

 
 



 
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