顕著で普遍的で最良の、最良のものの代表 世界遺産シンポジウム「世界遺産の未来―文化遺産の保護と 日本の国際協力」

 昨日は青山の国連大学ウ・タント国際会議場にて行われた世界遺産についてのシンポジウムを聴講してきました。
 主催は文化遺産国際協力コンソーシアムと文化庁でした。

 文化遺産国際協力コンソーシアムという組織は、2006年に設立されたばかりの組織で、海外の世界文化遺産の保存に協力してきた日本の長年の技術や知見をネットワーク化させるためにできたそうです。大きなきっかけは2001年のアフガニスタンはバーミヤンでのタリバンによる仏像破壊事件であり、かの地に縁のあった画家の平山郁夫さん(先月薬師寺の大唐西域壁画殿を見学したばかりです)が危機感を募らせて立ち上げに携わったとのことでした。
 
 たまたま新聞を読み込んでいたらこちらのイベントの告知があり(いつもはスルーしてしまうような場所に見つけた)、参加は自由にできるようなので申し込みをしたのですが、ちょうど奈良旅行後で世界遺産について考えていたときだったので、とてもタイミングがよかったです。(旅行の感想を書くのを止めたのは、シンポジウムに出てみてから書くほうがいいかなと思ったためです)
 
 昨日のプログラムは以下になります。

 ***

 *開会挨拶
 *「文化遺産国際協力コンソーシアムの紹介」
     後藤多聞(文化遺産国際協力コンソーシアム事務局長)
 *基調講演   「世界遺産条約:課題と展望」(同時通訳あり)
            キショー・ラオ(ユネスコ世界遺産センター長)
 *講  演1  「アンコール・ワットの歴史の謎に挑戦―現地の 人材養成と世紀の大発掘物語―」
             石澤良昭(文化遺産国際協力コンソーシアム会長/上智大学前学長)
   休憩
 *講  演2   「中米ホンジュラスにおける日本の文化遺産協力活動:世界遺産コパンをはじめとして」
             寺崎秀一郎(文化遺産国際協力コンソーシアム中南米分科会委員/早稲田大学文学学術院教授)
 *講  演3   「エジプト、王家の谷・アメンヘテプ3世墓の保存・修復作業」
             近藤二郎(文化遺産国際協力コンソーシアム西アジア分科会委員/早稲田大学文学学術院教授)
 *講  演4   「シルクロード沿いにあるバーミヤーン遺跡の保存の現状」
             前田耕作(文化遺産国際協力コンソーシアム副会長/和光大学名誉教授)
   休憩
 *パネルディスカッション テーマ:「世界遺産の未来―国際協力として我が国に何ができるのか」
           司会:関雄二(文化遺産国際協力コンソーシアム中南米分科会長/国立民族学博物館研究戦略センター教授)
 * 閉会挨拶

 昨日もらったパンフレット類↓
  1310heritage.jpg

 ***

 時間は30分ほどオーバーしましたし、休憩も少ししか入りませんでしたが、わたしは集中してとても楽しむことができました。
 自分がこんなにもこういう話が好きだとは知りませんでした(笑)。
 前のめりで聞いていたと思います。
 でも会場にいたみなさんかなり熱心にお話を聞かれていたと思います。それもなんだかよいなと思いました。300人以上来場していたと思います。
 
 昨日聞いたお話をまとめる力などわたしにはとてもありませんが、印象に残ったものを書きます。

 ***

 まずユネスコ世界遺産センター長のキショー・ラオさんの、世界遺産が現在抱える課題などのお話ですが、そもそも世界遺産というのは、「顕著で普遍的で最良のもの」を選ぶようにしているそうです。
 ですがその基準には曖昧な面があり(解釈によっていかようにもなる?)、最近は最良のものでしかもその最良を代表するようなものではなくてはいけない、ということになってきたそうです。
 なんだかすごいですよね。どんだけ素晴らしいものでなくてはいけないんだ。

 これはつまり、昨今世界遺産登録への申請が多く出過ぎている、ということであり、もっと言ってしまえばそれは各国各地域・観光業界からの圧力が強くなってきているということなのだそうです。
 観光産業はいまだに成長している分野で(伸び率年4%とか、先日の中国人観光客の話を思い出します)、世界遺産は目玉となるものなので、経済と政治がどうしても絡んでくるようです。
 しかし、世界遺産を選定するということは、その地域にそのような経済的な恵をもたらすことだけではなく、保護・保存への拘束力も持つものでなくてはないけない、とのことで、ラオさんからは厳しく取り扱っていきたいという意志を感じました。

 これらの世界遺産に関する政治的な問題(圧力)は、1970年代には考えられないものであったそうです。
 
 世界はやはり全体的に豊かになってきているということなのか。

 日本は長年に渡り世界遺産の発掘調査、補修保存の分野で技術や資金を提供しており、重要な存在だ(これからもよろしく頼む)とのことでした。世界には危機的な状況にある世界遺産がたくさんあるそうです(天災、人災、資金面など)。
 後半のパネルディスカッションで会場から「発展途上国は自国で世界遺産を守る資金やシステムを造れないのか(俺たちにはもうあんまり金がないぞ)」という話も出たのですが、ラオ先生は「それはまだまだ無理な話だよ」と返されていました。。
 
 ***

 それと、ほかの講演をされる先生方みなさんがおっしゃっていたこととして、世界遺産のある地域のコミュニティの理解を得ることが大事だということがありました。
 それがいかに重要なもので、世界全体、人類にとっての遺産なのだ、という理解です。
 破壊されたバーミヤンの遺跡周辺に住む人々はイスラム教徒なので、仏教の遺跡には興味がなかったのですが、人類の遺産というコンセプトを理解しつつあり、今少しずつ啓発されてきているそうです。

 石澤良昭さんのアンコールワットでのお話では、ポルポト派時代に発掘に携わる技術者や知識人を含めた大虐殺があったそうですが、今その後の世代が育ちつつあるし、「世界遺産・アンコールワット」の存在によってカンボジアの人々の破壊されたアイデンティティが復活した、ということがあるとのことでした。
 わたしが個人的に一番感動したのはこのお話でした(石澤良昭さんは年齢を感じさせないとてもエネルギッシュな方で、そこにも感銘を受けています)。

 わたしも奈良に行って、「日本ていい国だったんじゃん!」って思えたので。
 (去年行った二つの世界遺産、白川郷と知床ではそこまで思えなかったのですが。。)
 
 「世界遺産」には、そういう力があるのだな、と、改めて感じました。
 人を元気にする力。

 ***

 少しですが今まで海外旅行をして、その先でも世界遺産は見てきていますが、やはり自国の世界遺産を見るということは、海外のものを見るのとは別の体験になるような気がします。
 自国のものを見て、また海外のものを見たらもっといいだろうし、「お花畑」な言い方になりますが、そのような体験を重ねていくことで、世界市民であるとか、グローバルであるとか、地球市民というような感覚が多少は育まれるのではないかなと思いました。

 わたしなどはそういうところで役立つような専門知識も技術もありませんから、やはり観光でその地を訪ねて(マナーよく過ごし)、そしてそこで感じたことをこのような個人のブログで発信していく、という関わりくらいしか持てません。
 しかしながらそういうことが、個人個人が国境を超えた感覚を持つ手助けになるのではないか、それが、これからの時代にはやはり大事なのではないか、と考えます。

 まだまだ聞いた話はたっくさんありますが、一番に思うのはそういうことであります。

 文化遺産国際協力コンソーシアムのサイト → こちら

 
 *おまけ*
 今日の空、快晴!↓
131027sorabera.jpg
 今年世界文化遺産になった富士山が小さく見えておるのです☆

 
 

 


 
 
 
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テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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