砂田麻美監督 夢と狂気の王国

 おととい観にいった映画は、砂田麻美監督の「夢と狂気の王国」でした。
 
 ドキュメンタリー映画で今注目されている砂田麻美監督が去年の秋からスタジオジブリに入り込んで、「風立ちぬ」の完成と宮崎駿監督の引退会見までを取材したという映画です。



 砂田監督のデビュー作品を、わたしは今年の春に、所沢でやっていた映画祭で観ました。
 癌に侵された実父と家族のありようを追ったドキュメンタリー作品、「エンディングノート」です。
 
 この「エンディングノート」に関しては、わたしは複雑な気持ちになっていました。
 自分も父を亡くしてそんなにときが経っていないし(この初夏に三回忌でした)、介護もしていたので、実の父親が衰えていくところを作品にすることの是非、という点で引っかかってしまったためです。
 わたしは二十歳の頃、イメージフォーラム付属映像研究所(個人制作の実験映画の作りかたを教え、批評してくれる学校です)に通っていたため、心のどこかで「これを撮ったらどんななんだろう」と思いながら世界を観ている部分があると思います。父の介護をしているときも「これを記録しておくべきではないのか」と思うこともありました。
 そういうことがあるので、ちょっと冷静に判断できなかったのです。「エンディングノート」を。 
 
 でも、所沢の映画祭で、上映後砂田監督自身が舞台の上で映画祭プロデューサーとディスカッションする時間があり、客席との質疑応答もあったのですが、そこで作品について批判的な意見を言われたときに、「今撮っているから、次回作もぜひ観て下さい」と言い切ったんですね。
 その気の強さに感服していて、なにを撮っているんだろうと思っていました。

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 その「次回作」が、今年、いろいろと動きの激しいスタジオ・ジブリを追ったものだということなので、観てみることにしました。 
 わたしは特にジブリファンではないのですが、この「動きの激しさ」に引っ張られている部分があると思います。
 今の時期(世界的に変化の激しい時期)、このような功績のある場所でこのようなことが起こっているということに、なにか今の時代を生きる上でのヒントがあるのではないのかと思っているからです。

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 劇場で観る前に、ネット上でのこの映画のレビューや、YouTubeに上がっている関連動画などを漁っていたため、内容的に真新しいという感じはありませんでした。なにも知らないで観たほうがおもしろかっただろうと思います。
 宮崎監督については、NHKでやっているドキュメンタリーも随時見ていたので、それともかぶる点はあると思います。
 ただ一点、「風立ちぬ」のラストのヒロインの言葉が、元は真逆な内容のものだったのが、声優の録音の段階になって、作品中のものになったということは知らなかったので驚きました。作品の根本を覆す大転向が起こったようなのです。
 それがその元のままのセリフだったら、わたしが今、ジブリや宮崎駿監督のことをこんなに気にすることはなかったのかなと思います。
 「ただの悲観主義のお年寄り」で終わらなくてよかったよね、と、生意気ながら、思いました。
 世間的・世界的に見てあれだけ成功した人が、それではしょうがないじゃないか。
 わたしはそう思う。

 そこについてはまだまだ考えていて、簡単に書けることではないので(「かぐや姫の物語」も観ようと思っているので、考えが少しでもまとまればいいなと思っています)、作品そのものについて思ったことですが、砂田麻美監督はドキュメンタリー作家としてよい作家なのではないかなと思います。
 取材の対象に近づきすぎないし、自分の意見や思想を観客に押し付けることもしません。
 ただ自分に見えているものを映す、でもその編集の仕方や、シーン、画面の切り取り方にその人の個性が出るので、声高な意見が感じられないからと言って、作家の個性がないということではないと思います。
 声高になって方向性がハッキリしているものは、「ドキュメンタリー」ではなくて「啓蒙」だし。
 作品としては、「啓蒙」にしてしまうことのほうが簡単だと思います(蛇足ですが、わたしのブログなんかはそういうタイプだと自分でも思います)。観客にも伝わりやすいです。でもそれをしたら「ドキュメンタリー」ではなくなってしまうのだと思います。

 よく我慢したな、と思い、やはり砂田監督はとても気が強くていい作家だなあと思いました。
 ラストシーン、カメラを固定して、逃げなかったことは偉いと思いました。あれは名シーンだ。それをラストにするのも気が強くてすてき☆

 砂田麻美監督の作品を、次も観てみようと思えました。
 
 

 
 
 
 
 
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